映画ナラタージュについて

 

ただただ苦い。

葉山先生は自分が以前妻を追い込んでしまったことが足枷になり先に進めない、

自分を救ってくれた泉はもちろん特別な存在だし愛しいと思っているが、妻のように知らず知らずのうちに追い込んでしまうのではないかと恐れて好意に応えない、

泉の好意を知っているくせにいざ自分はどうなのか聞かれると「ごめん」

妻とは別れたと言ったのに家に行くとかわいらしい刺繍が施されたクッション、好きじゃないって言ってた映画、2人の写真

全く冗談に聞こえない「あーん」の提案、桜を取ろうとした泉にキス、メンタルが不安定になると泉の声が聴きたくなり、時間かまわず電話

 

妻に別れを告げる勇気もなく、泉をばっさり振るわけでもなく。

 

脆くて優しくてずるいひと。

 

でも惹きつけられずにはいられない雰囲気がある。

 

本当に不思議。

 

助手席に座って泉をぼんやり見る先生のあの目、あの表情。

シャワーで濡れたあの横顔。

川沿いで泉の前を歩くあの背中。

柚子に何かできることがあったはずだと手を地面に打ちつけて悔やむあの姿。

泉の涙をぬぐうあの指。

そして、朝焼けの中佇むあの姿。

 

全部忘れることができない。

 

髪もさもさでちょっとダサくて存在感なさそうな先生なのに、映画を観終わっても心の中にその存在が強く残っている。

 

わたしもきっとこれから先、雨が降るたび先生のことを思い出してしまうんだろうな。

 

 

 

 

と、ここまでが映画館で観たあとに書いた感想。葉山先生が色濃く残ってるのがよくわかる。

 

そして、つい先日もう一回会いたくて思わず豪華版を買ってしまった。

 

で、これより下が今日オーディオコメンタリー版を観て思ったこと。まとまってないけど。

 

 

 

大抵の恋愛ものって、

お互い最初の印象が悪くて、当て馬キャラが途中で大活躍して、最後は結ばれる、みたいな流れが決まってきてるところがある気がして。

 

登場人物のようにみんながみんな純情でまっすぐではないし、フィクションなのにこれが正解だ!って王道とか正しさとかを押し付けられる感じが最近少し食傷気味で。

 

 

でもナラタージュはその既定路線からずれていて良かった。

 

 

恋愛というもの自体はかたちがなくて、その時思ったことや感じたことが思い出として残るだけであって、

それは昔になればなるほど自分の中で美化したり、

逆に「あれはなんだったんだろう?」と恋愛だったのか疑ってしまうようなものもあったりして。

 

本当の相手の気持ちなんて実際はわからないし、結局は独りよがりで、から回ってすれちがってつらくてにがくて。

 

 

でも、だから良いんだよなと思った。

 

恋愛の正しいあり方なんてないんだなってこの映画で再確認した。

 

葉山先生も泉も小野くんもどこか歪んでて、正しい人なんていない。

 

苦しいしもどかしいんだけど、不思議ととても心地よかった。

 

 

 

コメンタリーでもあったけど、柚子ちゃんの話の部分や、最後に葉山の家に行く部分を入れてくれてありがとうって思う。

ひとってそんなに単純で美しいものじゃないよって、

もっと複雑でいろんな感情が入り混じって醜くてずるくて脆いものなんだって、

それを示してくれているような気がした。

 

見終わった直後はけっこう余韻がすごくて引きずるんだけど、ちょっと経つと何故かすっきりするんだよね。自由に生きていいんだって思える。

 

良い映画でした。ナラタージュ

 

3時間半バージョンもみたいなあ。